一病息災で痛風とつきあう
「無病息災」という言葉があります。『息災』とはもともと、仏の力によって災害や病気など除く意味ですが、転じて、「病気をせず健康でいる」という意味で使われています。
また「一病息災」とは、それを転用して作った、いわば新語であり、「一つの病気にかかっていれば、それだけ健康に気をつけるので、無病よりかえって健康を常に意識していられる」という意味を持つに至っています。
さて「一病息災」を痛風にあてはめてみると、もちろん一病とは痛風のことを指しています。痛風とは、腎臓や肝臓など、特定の臓器の病気ではありません。尿酸が過剰に体内合成される、あるいは体内にたまりすぎて起きる病気であって、いわば循環系の病気です。したがって、特定の臓器を治療すればいいというものではなく、治療のためには生活習慣全般にわたる改善が求められます。
痛風治療でよく言われるのは、およそ次のような内容です。
- 水分を多めに摂り、尿酸の排出を促す。
- 高カロリー食、多量の飲酒を控える。
- 太りすぎないよう、適正な体重になるよう管理する。
- プリン体を多く含む食品や飲料を控える。
- 医師の指示に従い、服薬等によって尿酸値を抑える。
これらをよく読んでみると、服薬を除いて、中高年以降の特に男性が健康に過ごす秘訣がほとんど含まれていると言っていいのではないでしょうか。
水分を多く摂ることは、夏場なら熱中症予防にもなります。
高カロリー食と多量の飲酒を控えることは、痛風のみならず、脳卒中や胃がんの予防にもつながります。
適正な体重管理のためにはウォーキングなど有酸素運動も必要であり、すなわち、健康な体になるための基本や秘訣とは、根本で相通じていると思います。
さて私自身のことですが、痛風になってからはしばらく、尿酸値を下げる薬を飲んでいました。またお酒は好きなので毎日のように飲んでいますが、週1回は休肝日を設け、その日は夕食も軽めにしています。
さすがに翌朝は空腹を感じますが、食欲があるということは、自分が健康でいることを改めて感じる瞬間でもあります。
勤務先までは6キロありますが、春や秋など、さわやかな季節には自転車で通勤しています。今では薬をのむことなく毎日が過ごせています。
まさに「一病息災」とは、自分が一つの病気であることを自覚したうえで、それ以上病気が進行しないように、絶えず病気を意識しながら毎日を送ることです。
そしてそれは何より、「自分は健康だから」と無茶をしたり暴飲暴食をしたりしないための歯止めとも言えることです。
痛風が不治の病だったのは遥か昔のことで、今は適切な治療をすれば進行も止められます。ですから、痛風を発症したと言って落胆することはありません。
日々健康を意識する指標を手に入れたことだと前向きに考えましょう。